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わたしたちの子供の時分、といいますと、大正のころということになりますが、そのころは、学校でもよく、なぞのかけっこをして遊びました。なぞを出す者が教壇に立って出して、分かった者が手を上げて答えるのですが、教室の生徒が紅白に分かれて、先生の審判で、競争をしたりしました。そんな、うちの大人たちから聞いてきて、難問を出したりしましたが、そうそう新しいのがないために、うちで聞いてきたのがかち合って答えがすぐ分かって、大笑いになったりしました。
「この木は、ナアニ」という、大変簡単なのがありました。この答えは、「此の木」すなわち「柴」なのですが、柴という字はまだ学校で習っていない字だったので、先生の審判で、点になりませんでした。しかし、「この木」が一度出てしまったので、次に「この糸の色は、ナアニ」というのは、すぐに「紫」と答えられてしまいました。
素朴な少年少女のなぞなぞ遊びは、すっかり下火になってしまったように思いますが、どうでしょうか。もうそうだとすれば、そのなぞなぞ遊びに代わる遊びは、今のみなさんにとって何でしょうか。
私は、テレビのクイズ番組というのが、なぞなぞ遊びの空白をうずめているのだと思います。クイズも、確かに一種のなぞ解きの遊びですが、今まで見てきたようななぞとはずいぶん違うと思います。
テレビのクイズ番組のクイズは、質問はおおむねまともです。中にはふざけたものや、とんち式のものもありますが、多くは答えに正確な知識にもとづいたことを要求しています。
会話
俊子 :私は動物です。私は何でしょう。さあ、ひろしさん、当てて下さい。
ひろし:はい。あなたは水の中にいますか。
俊子 :いいえ、いません。
ひろし:四つ足で歩きますか。
俊子 :いいえ。
ひろし:じゃ、空を飛べますか。
俊子 :いいえ、あまり飛べません。
ひろし:あまり……。少しは飛べるのなら、鳥の仲間なんですね。
俊子 :ええ。でも、飛べるというほどではありません。
ひろし:鳥小屋に入れられていますか。
俊子 :はい、そうです。ときどき外にも出ますけど。
先生 :はい、そこまで。だんだん分かってきましたね。では、春夫君、この後を続けて聞いてご覧なさい。
春夫 :はい。あなたは鶏でしょう。
俊子 :そうです。でもそれだけではまだだめです。
春夫 :ううん。じゃあ、あなたは卵を生みますか。
俊子 :いいえ、まだ生みません。
春夫 :まだ……。あ、分かった。あなたはひよこでしょう。
俊子 :そうです。当たりました。
先生 :当たりましたね。よく考えて。うまい尋ね方をしたからです。俊子君の答え方もはっきりしていて上手でした。
