二十一世紀の食事
ある日曜日の夕食のときである。
大好物のステーキを、黙々と食べていた長男のたかしが、突然フォークを置くと、言い始めた。
「お父さん、ぼくはこのごろ、ほんとに迷っちまうんだよ。」
「なにに迷うんだ?」
「二十一世紀にさ」
「二十一世紀に、どうして、迷うんだ?」と私は、なんのことか分からずに、聞き返した。
「つまり、二十一世紀になるのが、うれしいか、つまらないか、分からなくなっちまうんだ。」
たかしは、フォークを取り上げて、ステーキをもう一切れ口に/びながら、続けた。
「だって、二十一世紀はなると、こんなステーキはなくなって、食事はいつもチューブ入りのゼリーみたいなものか、それとも錠剤を三粒ぐらいですますようになってしまうんでしょう?いや、注射するようになるかもしれないんだっけ。ぼくは、未来は好きなんだけど、どうも、そこんところが気にいらないんだ。」
たかしは一人で頷きながら、あらためて、肉の味を味わおうとするように、ゆっくり肉を噛んだ。
「また始まったわね、たかしの屁理屈が。」
ママが、冷やかすように入ったが、たかしは気にもしないようで、
「でもやっぱり、ぼくは未来が好きだな。コンコルドや、ロッキード二二七〇みたいなすごいSSTはじゃんじゃん飛ぶようになるし、エアカーや、動く歩道も実用になるし、未来ってかっこいいからね。」
わたしは、たかしのまじめくさった顔を見て、思わず笑い出しそうになったが、考えてみれば、もっともな心配だ。もし、二十一世紀が、うまいものを食べられなくなる時代なら、たかしたち少年にとってだけでなく、おとなたちにとっても大問題だからだ。
ファンクション用語
比較
A あの人は私ぐらい背が高いですよ。
B しかし、体はあなたほど丈夫じゃないでしょう。
A そうですね。私に比べて体がちょっと弱いようですね。
B 体力ではきっとあなたに劣っているでしょう。
A そうかもしれませんね。
