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コピー食品が出回っている。コピー食品というのは、本物ではないが、本物によく似ている食品である。例えば、かにの足のように見えるが、実は安いさかなで作ったものや、サラダオイルで作ったイクラなど、たくさん出ている。本物よりずっと安い材料を使ったり、普通なら捨てる部分を集めて上等の肉のように作ったりする。お客は安いと思って喜んで買う。
このようなコピー食品を作るには、高度な技術が必要である。最近は加工技術が進んだので、味、色、形から、香り、歯ざわりまで、本物そっくりの物を作ることができる。しかし、安い材料をおいしくするためには、たくさんの食品添加物を使う。また、大きな工場で大量に作るから、合成保存料などもたくさん使う必要がある。
こうしてできたコピー食品は形が同じで、料理しやすいから、学校給食や外食産業で使うのに向いている。これから大きくなる子供たちが、コピー食品をたくさん食べるのは、心配なことである。しかも、本物のさかなと違って骨がないから、喜んで食べる場合も多いそうだ。
にせものの食品は昔からあった。安いさかなを高いさかなの名前で売ったりすることは、珍しくなかった。しかし現在は、加工技術の進歩のために、人間の体に悪いものが出回るようになった。科学の進歩が人間を苦しめるのは残念なことである。
会話
(一)
会社で残業中の社員の会話。Aは男性、Bは女性。
A このお寿司はどうしたんですか。
B 部長のおごりです。先に帰るから、食べてくださいって。
A へえ、珍しい。じゃ、食べましょう。
B ええ。
A お、イクラが入っている。ぼく、イクラ大好きなんです。
B じゃ、わたしのもどうぞ。
A いいんですか。
B ええ、わたしはいりませんから、どうぞ。
A じゃ、いただきます。でも、どうしてですか。
B 安いイクラはコピー食品だって聞いたので。
A コピーって、にせものですか。
B ええ、サラダオイルで作るんですって。
A へえ?でも、色も形もそっくりですよ。(食べで)味もそっくり。
B 歯ざわりも。
A ええ。
B このかにの足も、きっと安いおさかなですよ、本当は。
A でも、うまいですよ。すばらしい加工技術ですね。
B 食品添加物がたくさん入っていますよ。
A そうでしょうね。
B 合成保存料も。
A ちょっとこわいですね。
B そうですよ。特に子供が学校給食や外食でコピー食品を食べるのは、心配ですよ。
A でも、どうしてこのイクラやかにがコピー食品だとわかるんですか。
B 部長のおごりですもの。
(二)
夫と妻の会話、デパートの食品売り場で。
妻:あら、これ、安いわ。
夫:どれ?
妻:このイクラ。
夫:ほんとだ。
妻:どうしてこんなに安いのかしら。
夫:うん…、あ、分かった。このごろはやりのコピー食品だよ。
妻:コピー?
夫:にせものだよ。たしか、イクラはサラダオイルで作るんだよ。
妻:へえ、でも、本物そっくりね。
夫:しろうとには区別ができないんだって。
妻:食べても?
夫:うん。
妻:じゃ、いいじゃないの、コピーでも。安くて。
夫:そんなことないよ。
妻:どうして?
夫:自然の食品じゃないんだ。工場で作るんだよ。
妻:そうね。
夫:合成保存料もたくさん入っているよ、きっと。
妻:そうね。じゃ、やめましょう。
夫:やめて、本物を買う?
妻:いいえ、本物のサラダオイルを買って…。
夫:え?
妻:安いおさかなのフライを作りましょう。
